イタリア豆知識

盗難注意
2021.03.30

イタリアのネガティブなイメージと言えば、「スリ」「ひったくり」。街中や駅はもちろんのこと、レストランでも注意は必要ですが、空港もまた例外ではありません。 特に多いのが到着ロビーでの置き引き被害です。
長時間の窮屈なフライトから解放されたと思ったら、預けた荷物が出てくるまで日本ではありえない程待たされる。到着ロビーの扉が開く頃にはイライラと疲労はもうマックス。スーツケースも重いし、ちょっとロビーのBARでカフェでも一杯...と一瞬目を離した隙に、カートのラックに置いたバッグが跡形も無い! こういったケースが実に多いのです。中には買付け資金の数百万円を、一瞬にして持って行かれた被害者も1人や2人ではありません。
逆に泥棒も戦利品の額の大きさにたまげたのではないでしょうか?
「何じゃこりゃ~?!」

実は誰よりも用心深い私、大金の入ったバッグを身体から離して、ましてやカートに置くなんて言語道断!と喝を入れたいところでありますが、やはり時差や疲れもあるし、ふと気が緩んでしまうんでしょうね。

...ってな訳で、空港は到着ロビーにも、チェックインカウンター周辺にも、あなたの財布を狙っている悪党どもがウロウロしています。くれぐれもご注意くださいませ。

狙われているといえば、日本のパスポート。お財布と一緒にパスポートも盗まれてしまい、現地の日本大使館や領事館で(まるで時代が逆戻りしたかのようなお化粧と装いの)係員のオバ様に邪険に扱われながら、臨時パスポートの発効手続きをされた方も少なくないのではないでしょうか。

さて、ある日空港警察から「怪しげな日本人がいるから、ちょっと来てくれ」との要請が入りました。当時ミラノ・マルペンサ空港には世界中の航空会社が乗り入れていましたが、日本人スタッフは数人しかおらず、こういった依頼は珍しくありませんでした。もちろんボランティア...。
この時も他社の旅客ではありましたが、警察の心証を良くしておくに越したことはないのと、ちょっとした好奇心から二つ返事で即出動。現場であるコペンハーゲン行きのチェックインカウンターの前では、明らかに日本人ではない青年が2人、満面の笑みで、でも泣きそうな目をして私を待っていました。

警官: 「この2人は日本のパスポートを所持してるんだけど、どうも疑わしいから日本語で何か話しかけてみて。」
私: 「ラジャ~!」(青年達に向かって)「お名前は?」
謎の青年達: 「ハイ。」(笑顔)
私: 「ご出身はどこですか?」
謎の青年達: 「ハイ。」(笑顔)
私: 「今からどこに行きますか。」
謎の青年達: 「ハイ。」(笑顔)
ダメだこりゃ^^;

警察官詰所での取り調べに私も同行することになったのですが、そこはイタリアの緩い警察官2人、被疑者達に「follow me」とか言って先を歩きだしたのです。「あれ?2人とも先行ったらあかんやろ。」と懸念するも束の間、
案の定、謎の青年達はお互いに目配せをしたかと思うと、左右に分かれて全速力で走り出しました。
私はといえば、目の前で繰り広げられている刑事ドラマのような光景に戸惑うも、気がつくと「polizia~! Polozia~!(警察~!)」と叫びながら、青年の一人を追いかけて広大な空港ロビーを爆走していました。制服のピッチピチのスカートと5cm強のハイヒールにもかかわらず...。
  私の雄叫びに反応してか否か、四方八方から人が現れてあっという間に逃亡者を取り押さえました。
「イタリアの人って協力的だわ~。」と感動しましたが、実は空港内を警備中の私服警官達だと知ってナットク。
もう1人の青年も程なく捕まり、無事一件落着。

その後私の「武勇伝」は空港中に広まる事となり、某JALの日本人スタッフMちゃんには「レイコちゃんたら、オテンバさんね!」なんて笑われたりもしましたが、取り押さえられ泣きじゃくっていた青年を思うと、犯罪とはいえ「あのパスポートを手に入れる為にどれだけ苦労したんだろう。」と今でも少し胸が痛むのです。

今回は「豆知識」というより「レイコのおてんばリポート」みたいになりましたが、パスポートを盗まれると、せっかくの楽しい旅行が台無しになるうえに、それが闇のシンジケートの資金源となり、やがては世界を破滅の道へと...

自分の為にも、世界平和の為にもパスポートは肌身離さず!